本ページでは日本において2024年12月12日より施行されるCBD新規制についてまとめています。
新規制は当初10月1日施行を予定しておりましたが、12月に延期する運びとなりました。
参照:令和 6 年 9 月 11 日 水曜日 (号外第 官 報 212 号)/「国民と政府をつなぐ官報」
1:CBD規制についての背景
日本国内でのCBD(カンナビジオール)市場は急速に成長を遂げています。
特に、健康維持やストレス緩和を目的とする製品として人気が高まっていますが、その中で問題視されてきたのがTHC(テトラヒドロカンナビノール)の残留基準です。
CBD製品には微量のTHCが含まれる可能性があるため、規制が曖昧なままだと消費者や業界に混乱が生じることが懸念されていました。これを受け、2024年9月から施行される大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正が行われ、その中でTHC残留限度値の設定が明確化されようとしています。
2.製品中のΔ9-THC残留限度値と製品区分
改正に伴い、Δ9-THCの残留限度値が以下のように設定されました:
この設定により、CBD製品のTHC含有量に厳しい基準が設けられ、特に輸入製品に対して大きな影響を与える可能性があります。また、製品区分もこれまで曖昧であった「油脂」や「粉末」が同じ区分に整理されたことで、原料の方が基準値が厳しくなるといった不安は解消されました。
一方で、製品の分類における正確な案は示されておらず、事業者としては不透明な状況が続きます。
例)90%油脂で、他は油脂ではない場合等
3.パブリックコメントの内容と影響
2024年5月30日から6月28日にかけて実施されたパブリックコメントでは、3,398件の意見が寄せられました。(5,523件中2,125件は無関係として除外)
その中で、特に注目されたのがTHC残留限度値に関する意見です。多くのCBD製品が日本の厳しい基準に適応できない可能性が指摘され、特に難治性てんかんの患者やその家族からは「現在使用している製品が使えなくなるのではないか」という深刻な懸念が示されました。
これに対し、厚生労働省は「CBD製品の使用を確保する体制を検討中」と回答していますが、具体的な施策はまだ明確になっていません。また、産業界からは「THC残留限度値を0.02%〜0.3%に引き上げるべき」との意見もありましたが、これも拒否されました。
参照:大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案に関する意見募集の結果について/令和6年9月 11 日
4.THC国際基準との比較
日本の規制は、欧州や米国と比較して非常に厳しい基準が設定されています。
以下は、日本と欧米の基準値を比較したものです。
欧州では0.2%〜0.3%のTHC含有量が許容されており、米国でも0.3%以下の製品は合法的に流通しています。一方、日本では油脂や粉末に対して10ppm(0.001%)という極めて厳しい基準が設けられており、国際基準と比較しても非常に保守的です。この差が、日本のCBD製品の輸入や開発において大きな制約となっています。
5.CBD新基準が与える業界への影響と今後の展望
今回の規制改正は、製品区分の明確化により一定の予見可能性を業界に与えたものの、THC残留限度値の厳格さが業界に与える影響は大きいです。特に、輸入製品や新規開発の制約が続くことが予想され、事業者は引き続き規制の動向を注視しなければなりません。
一方で、国際基準に合わせた柔軟な規制緩和の必要性が強く求められています。特に、CBDを使用している難治性てんかん患者のような医療ニーズを持つ人々への配慮が欠かせません。今後、政府と業界が継続的な対話を通じて規制の改善に取り組み、より柔軟かつ実効的な規制が導入されることが期待されます。
6.12月施行CBD規制についての結論
- 2024年12月12日に新基準による規制が施行される(CBD規制強化)
- 既存製品の多くが規制対象となり、施行日前日には自宅外に廃棄しないと違法となる
- パブリックコメントでは5,523件の声が寄せられた。(内2,125件は無関係として除外)
- 難治性てんかんの患者などの使用に対し、厚生労働省は「CBD製品の使用を確保する体制を検討中」と回答 ※明確な施策については2024/9/14時点では未確定
- 油脂や粉末に対して10ppm(0.001%)という極めて厳しい基準は、日本のCBD製品の輸入や開発において大きな制約となる
今回の法改正およびパブリックコメントを通じて、CBD業界は一定の規制明確化を得たものの、主要な規制緩和の要求は受け入れられませんでした。特に、THC残留限度値の厳格さが今後も産業振興に対する制約として残り続けるでしょう。今後、消費者の安全性を確保しつつ、CBD市場のさらなる発展を図るためには、政府と業界の協力が不可欠です。規制の緩和に向けた継続的な対話が求められています。
参考文献
1:令和 6 年 9 月 11 日 水曜日 (号外第 官 報 212 号)/「国民と政府をつなぐ官報」
3:大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案に関する意見募集の結果について/令和6年9月 11 日